眼の病気に関するQ&A
子どもの近視抑制に関する5つの疑問
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Q1
そもそも近視とは何ですか?
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A1
近視とは、目に入ってきた光が網膜の手前でピントを結んでしまい、遠くのものがぼやけて見える状態のことです。多くの場合、眼球が前後に長くなる「眼軸延長」が原因です。
日本では特に子どもの近視が増えており、小学生の3割以上、中学生では5割以上が裸眼視力1.0未満(多くは近視によるもの)と報告されています。
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Q2
近視の原因は何ですか?
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A2
近視は「遺伝」と「環境」の両方が関わっています。
遺伝的要因両親のどちらか、特に両方が近視の場合、子どもも近視になる可能性が高いといわれています。
環境的要因 長時間のスマートフォン・タブレット使用や読書など、近くを見る作業が多いと近視が進行しやすいとされています。また、外遊びの時間(屋外活動)が少ないと近視のリスクが上がることが多数の研究で示されています。近年、子どもの屋外活動時間が減少していることも、近視の増加に影響していると考えられています。
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Q3
近視の治療法について教えてください。
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A3
近視を「完全に治す」方法は現時点ではありませんが、視力を矯正する方法があります。
眼鏡やコンタクトレンズもっとも一般的な方法で、学校生活や日常生活を快適にします。
屈折矯正手術(ICLやレーシックなど) 大人になってから選択できる方法ですが、子どもには行いません。
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Q4
近視抑制治療について教えてください。
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A4
「近視を完全に治す」ことは難しいのですが、「近視の進行をできるだけ遅らせる」ための方法が複数あり、最近注目されています。
いずれの方法も眼軸の伸びを抑制することで、近視の進行をゆっくりにするものです。代表的な方法
低濃度アトロピン点眼0.01〜0.05%の低濃度アトロピン点眼で、近視の進行を30〜60%抑えられると報告されています。
当院では0.025%低濃度アトロピン「リジュセア®ミニ」を導入しています(自由診療)。詳しくはご来院のうえ、お尋ねください。
特殊なコンタクトレンズ ・オルソケラトロジー(夜間装用ハードレンズ):
寝ている間に角膜の形を矯正し、近視の進行を抑える効果が報告されています。当院では取り扱っておりません。
・多焦点ソフトコンタクトレンズ(MiSight®など):
海外の臨床試験で、3年間で近視の進行を約60%抑制したと報告されています。当院ではMiSight®の導入に向けて準備中です(2025年9月現在)。
生活習慣の工夫 ・1日2時間以上の屋外活動(特に幼少期に重要とされています)
・読書やゲームは30〜40分ごとに休憩
・室内を明るく保ち、本や端末は30cm以上離して使用
特殊デザイン眼鏡(MyoSmart®等)・レッドライト治療 海外では近視抑制治療として研究成果が報告されていますが、日本ではまだ「近視抑制を目的とした医療機器・治療法」として厚生労働省に公式承認されていません。当院では取り扱っておりません。
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Q5
近視抑制治療といっても、近視を治すわけではないのですか?
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A5
これは大変重要なポイントです。近視抑制治療は「現在の近視を完全に治す(正視に戻す)」治療ではありません。
一度伸びた眼軸を短くすることは解剖学的に不可能だからです(身長を低くする方法がないのと同じです)。
それでは、なぜ近視抑制治療が注目されているのでしょうか?
それは近視が日常生活で不便なだけでなく、将来的に緑内障・網膜剥離・網脈絡膜萎縮などの眼疾患リスクを高めるからです。特に強度近視ではリスクが高く、東アジアでは小児近視の増加を背景に、各国で近視抑制治療が盛んに行われています。
日本でも厚労省の承認を受けた治療が広がりつつあります。複数の方法がありますので、お子さんの年齢や生活習慣に合わせて、ぜひ眼科でご相談ください。